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コラッツ予想:統計的振る舞いのモデル化と理論式の導出

コラッツ予想において、1に到達するまでの操作回数(以下、stopping times)のモデルを構築します。

 

f(n)=3n+1, g(n)=n/2とします。

nが奇数なら、g(f(n))でステップ数:+2

nが偶数なら、g(n)でステップ数が+1となります。

上記操作の後、次の数が偶数か奇数になる確率は1/2であると仮定します。

 

x=\log(n)という変数を考えると、確率1/2で、約\log(\frac{3}{2})だけ正方向に移動し、確率1/2で\log(2)だけ負方向に移動します。

最初に、x=0に初めて到達する時刻tについて考えます。

軸のスケールを取り直し、s=\frac{2}{\log(3)}倍すると、

(正方向の移動量)-(負方向の移動量)=2になります。

そこで、X(n)=s\log(n)と置きます。以下では、X(n)のnを省略して記載します。

このとき、時刻Δt=1の間に、v=\frac{s}{2}(\log(2)-\log(\frac{3}{2})=\frac{\log(\frac{4}{3})}{\log(3)}だけ負方向にドリフトするとみなすと、正方向と負方向の移動量が1になるため、定数ドリフトが存在する場合のブラウン運動で近似します。

即ち、ブラウン運動において、負方向への定数ドリフトがある際に、距離-Xの位置に初めて到達する到達時刻tを求める問題を解くことに帰着します。

 次に到達時刻tとstopping times T_sとの関係式を導出します。

正方向の移動回数をt_{+}, 負方向の移動回数をt_{-}とすると、以下の式が成り立ちます。

t_{-} + t_{+}=t

t_{-} - t_{+}+vt=X

 

これを解くと、

t_{+}=\frac{(1+v)t-X}{2}

t_{-}=\frac{(1-v)t+X}{2}

 

t_{+}はステップ数としては2回分なので、stopping times T_sは

T_{s}=2t_{+} + t_{-}=\frac{(3+v)t-X}{2}・・・(1)

 を満たします。

tは、逆ガウス分布に従うことが知られており、

確率密度関数は、

p(t)=\frac{X}{(2πt^3)^\frac{1}{2}}exp(-\frac{(X-vt)^2}{2t})

また、期待値と分散は、

E[t]=\frac{X}{v}, V[t]=\frac{X}{v^3}となるので、

E[T_{s}]=\frac{3X}{2v}

V[T_{s}]=\frac{(3+v)^2X}{4v^3}

また、

\frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n}E_n[T_{s}]\sim\frac{3s}{2v}(\frac{X}{s}-1)

なども成り立ちます。

 

これで、stopping timesに関する平均値と分散を得ます。

確率密度関数に(1)を代入し、測度の変換

2dT_s=(3+v)dt

を行うと、stopping timesの確率密度関数として

p_{X}(T_{s})=\frac{2(3+v)^(\frac{1}{2})}{(2\pi(2T_{s}+X)^3)^(\frac{1}{2})}exp(-\frac{(3X-2vT_{s})^2}{2(3+v)(2T_{s}+X)})

を得ます。

 

これは、nのstopping timesが[T_{s}, T_{s} + dT_{s}]となる確率が

p_{X}(T_{s})dT_{s}で表されることを意味しています。

よって、1~nまでp_{X}の和をとれば、n以下の数に対して、stopping timesの度数分布F(T_{s})を求めることが可能になります。

F(T_{s}) = \sum_{k = 1}^{n}p_{X}(T_{s})\sim\frac{1}{s}\int_{0}^{X}p_x(T_{s})exp(\frac{x}{s})dx

となります。