趣味の研究

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幾何ブラウン運動の例

以下では負方向にドリフトがある場合の幾何ブラウン運動を考えます。

 

dX_t=(-\mu +\frac{\sigma^2}{2})X_tdt+\sigma X_t dW_t

ここでは、Xの対数を取った場合のドリフトを\muとしました。

 

これに対するg(x)の微分方程式は、

\frac{\sigma^2}{2}\frac{d^2}{dx^2}(x^2g(x) )+(\mu-\frac{1}{2}\sigma^2)\frac{d}{dx}(xg(x) )+ikg(t)=-\delta(x-\xi)

 

これは、Eulerの方程式であり、Sturm-Liouville方程式の場合のグリーン関数を求める手法が適用できます。

Sturm-Liouville方程式のように書き換えると、

r(x)\frac{d}{dx}(p(x)\frac{d}{dx}g(x))+q(x)=-\delta(x-\xi)

となります。

ここで、

r(x)=\frac{\sigma^2}{2}x^{-1-\frac{2\mu}{\sigma^2}}

p(x)=x^{3+\frac{2\mu}{\sigma^2}}

  です。

 

右辺が0の時の独立解は、x^{\lambda-1}とおくと、

\frac{\sigma^2}{2}\lambda^2+\mu\lambda+ik=0

 

この二次方程式の二つの解を\alpha, \betaと置きます。

α<βです。

 

y_1(x)=x^{\alpha-1}

y_2(x)=x^{\beta-1}

と置くと、

x<\xiの領域では、x=1で0になることから、c=-1として

y_1(x)+cy_2(x)

x>\xiの領域ではx=∞で十分早く0に収束することから

y_1(x)境界条件を満たす解になります。

次にSturm-Liouville方程式のグリーン関数構成法に従い、グリーン関数を構成します。r(x)が乗算されている部分だけSturm-Liouville方程式とは異なるので、そこを考慮すると、

グリーン関数は、x<\xiでは、

-\frac{y_1(\xi)(y_1(x)+cy_2(x))}{A(\xi)}

x>\xiでは、

-\frac{y_1(x)(y_1(\xi)+cy_2(\xi))}{A(\xi)}

A(\xi)=cp(\xi)r(\xi)(y'_1(\xi)y_2(\xi)-y_1(\xi)y'_2(\xi))

です。これでg(x)が求められました。

 ここで、\alpha,\beta,cはkに依存することに注意しておきます。

A(x)は具体的には、

A(\xi)=\frac{c\sigma^2}{2}\xi^2(\alpha-\beta)\xi^{\alpha+\beta-3}

\alpha+\beta=-\frac{2\mu}{\sigma^2}

なので、

A(\xi)=\frac{c\sigma^2}{2}(\alpha-\beta)\xi^{-\frac{2\mu}{\sigma^2}-1}

ここで、k=0と置くと、\xiから出発して、いずれxに到達する確率を求めることができます。

k=0のとき、

\alpha=-\frac{2\mu}{\sigma^2}, \beta=0なので、

x<\xiでは、

\frac{1}{\mu}(x^{-1}-x^{-\frac{2u}{\sigma^2}-1})

x>\xiでは、

\frac{1}{\mu}({\frac{x}{\xi}})^{-\frac{2u}{\sigma^2}-1}(\xi^{-1}-\xi^{-\frac{2u}{\sigma^2}-1})

となります。

この結果から、到達する数の最大値を算出することができます。

first passage timeの確率分布の特性関数は、前の記事の結果から、

\int_{0}^{\infty}\exp(ikt)f(t)dt=- \frac{\sigma(1)^2}{2}\frac{dg(x)}{dx}|_{x=1}

なので、

\int_{0}^{\infty}\exp(ikt)f(t)dt=\frac{\sigma^2}{2}\frac{y_1(\xi)(\alpha-\beta)}{A(\xi)}=\xi^{-\beta}

\beta=\frac{-\mu+\sqrt{\mu^2-2\sigma^2ik}}{\sigma^2}

で与えられます。