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コラッツのモデルの詳細化

いよいよ線形確率過程の場合の式の導出に移ります。線形確率過程とは、線形微分方程式の確率過程を表すものとします。

これまで、まわりくどくグリーン関数を構成してきたのは、線形確率過程の場合、線形確率微分方程式やFokker-Planckを直接解析するのが困難だからです。

以前のコラッツ予想のstopping timeの確率的モデルでは、幾何ブラウン運動を用いて解析を行いました。しかし、実際は、3x+1, x/2の操作を表現できる必要があるため、

 

dX_t=( (-\mu +\frac{\sigma^2}{2})X_t+\sigma\eta)dt+(\sigma X_t+\sigma\eta)dW_t

のような確率過程が妥当であると考えられます。

\eta\sigmaを乗算しているのは、計算の都合上で、本質的な意味はありません。

ここで、\eta\sigma\frac{3x+1}{2}\frac{1}{2}の部分を表しています。

 

この確率過程に対する微分方程式は、

y=x+\etaと変数変換し、yを改めてxと置きます。

また、\xi+\etaを改めて\xiと置きます。

\frac{\sigma^2}{2}\frac{d^2}{dx^2}(x^2 g(x) )+\frac{d}{dx}( ( (\mu-\frac{1}{2}\sigma^2)x+\tau)g(x) )+ikg(t)=-\delta(x-\xi)     eq(2)

 ここで、

\tau=-\eta\sigma-(\mu-\frac{\sigma^2}{2})\eta

です。

この解を幾何ブラウン運動の場合を参考に

y_1(x)=x^{\alpha-1}w(x)

y_2(x)=x^{\beta-1}z(x)

のように記載します。

\alpha, \betaは幾何ブラウン運動と同様、

\frac{\sigma^2}{2}\lambda^2+\mu\lambda+ik=0

この二次方程式の二つの解です。

 

 これらの関数を微分した結果を

(\alpha-1)x^{\alpha-2}w_d(x)

(\beta-1) x^{\beta-2}z_d(x) 

 

と置きます。ここでeq(2)はX=\frac{1}{x}の変数変換を行うことにより、X=0に確定特異点を持つ微分方程式になるため、Frobeniusの級数展開が適用可能になります。よって、w,w_dなどの関数は、すべて1/xの多項式であり、定数係数が1となります。

また、kに依存するのがx^{-l}の係数部分だけであるため、kで微分した結果は、O(1/x)になります。

Sturm-Liouville方程式のように書き換えた結果も同様に修正されます。

r(x)\frac{d}{dx}(p(x)g(x))+q(x)=-\delta(x-\xi)

となります。

ここで、

r(x)=\frac{\sigma^2}{2}x^{-1-\frac{2\mu}{\sigma^2}}\exp(-\frac{2\tau}{\sigma^2 x})

p(x)=x^{3+\frac{2\mu}{\sigma^2}}\exp(\frac{2\tau}{\sigma^2 x})

  です。

グリーン関数も幾何ブラウン運動の場合と同様に構成でき、

x<\xiの領域では、x=1+\etaで0になることから、

y_1(x)+cy_2(x)

w(1+\eta)+cz(1+\eta)=0

x>\xiの領域ではx=∞で十分早く0に収束することから

y_1(x)境界条件を満たす解になります。

次にSturm-Liouville方程式のグリーン関数構成法に従い、グリーン関数を構成します。r(x)が乗算されている部分だけSturm-Liouville方程式とは異なるので、そこを考慮すると、

グリーン関数g(x)は、x<\xiでは、

g(x)=-\frac{y_1(\xi)(y_1(x)+cy_2(x))}{A(\xi)}

x>\xiでは、

g(x)=-\frac{y_1(x)(y_1(\xi)+cy_2(\xi))}{A(\xi)}

A(\xi)=cp(\xi)r(\xi)(y'_1(\xi)y_2(\xi)-y_1(\xi)y'_2(\xi))

です。

 ここで、\alpha,\beta,cはkに依存することに注意しておきます。

A(x)は具体的には、

A(\xi)=\frac{c\sigma^2}{2}\xi^{-1-\frac{2\mu}{\sigma^2}}\Psi_k(\xi)

ここで、

\Psi_k(x)=(\alpha-1)w_d(x)z(x)-(\beta-1)w(x)z_d(x)

 (1+\eta)^{\alpha}w(1+\eta)+c(1+\eta)^{\beta}z(1+\eta)=0
です。

ここで、k=0と置くと、\xiから出発して、いずれxに到達する回数を求めることができます。

k=0のとき、

\alpha=-\frac{2\mu}{\sigma^2}, \beta=0なので、

x<\xiでは、

\frac{z(x)x^{-1}+\frac{w(x)z(1+\eta)}{w(1+\eta)}(\frac{x}{1+\eta})^{-\frac{2\mu}{\sigma^2}-1}}{\Psi_0(\xi)}

x>\xiでは、

({\frac{x}{\xi}})^{-\frac{2\mu}{\sigma^2}-1}\frac{z(\xi)\xi^{-1}+\frac{w(\xi)z(1+\eta)}{w(1+\eta)}(\frac{\xi}{1+\eta})^{-\frac{2\mu}{\sigma^2}-1}}{\Psi_0(\xi)}

となります。

 

幾何ブラウン運動と同様、

first passage timeの確率分布の特性関数は、

\int_{0}^{\infty}\exp(ikt)f(t)dt=-(\xi+\eta)^{-\beta}\frac{(\alpha-1)(1+\eta)^{\alpha}wd(1+\eta)+c(\beta-1)(1+\eta)^{\beta}zd(1+\eta)}{c( (\alpha-1) w_d(\xi+\eta)z(\xi+\eta)-(\beta-1)w(\xi+\eta)z_d(\xi+\eta) )}

 (1+\eta)^{\alpha-1}w(1+\eta)+c(1+\eta)^{\beta-1}z(1+\eta)=0

を代入して

\int_{0}^{\infty}\exp(ikt)f(t)dt=(\frac{\xi+\eta}{1+\eta})^{-\beta}\frac{\Psi_k(1+\eta)}{w(1+\eta)\Psi_k(\xi+\eta)}

ここで、

\Psi_k(x)=(\alpha-1)w_d(x)z(x)-(\beta-1)w(x)z_d(x)

\beta=\frac{-\mu+\sqrt{\mu^2-2\sigma^2ik}}{\sigma^2}

\alpha=\frac{-\mu-\sqrt{\mu^2-2\sigma^2ik}}{\sigma^2}

 

です。

\xiが大きいところでは、各\xi^{-1}多項式はほぼ1になるので、

 [tex:(\frac{\xi+\eta}{1+\eta})^{-\beta_k}\frac{\Psi_k(1+\eta)}{w(1+\eta)(\alpha_k-\beta_k)}]

となります。

 ここで、kへの依存性を明確に記載しました。