趣味の研究

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混合確率分布とウェーブレット変換

任意の確率密度関数は別の確率密度関数の混合確率分布で表されるのか?


という問題に対し、ウェーブレット変換の手法を用いて考えてみます。

 

⚪︎定義

\mathrm{R^n}で定義された確率密度関数p(x)に対し、

p_{a,b}(x)=\Pi_k|a_k|^{-1}p(\frac{x-b}{a})

と定義する。

また、p(x)は、p(x_1,x_2,\cdot\cdot\cdot,x_n)を、(\frac{x-b}{a})は、(\frac{x_1-b_1}{a_1},\frac{x_2-b_2}{a_2},\cdot\cdot\cdot,\frac{x_n-b_n}{a_n})を表すものとする。

p_{a,b}確率密度関数になることは容易に確かめることができる。

以下では、細字の添え字についてもベクトルを表すものとする。

 

○命題?

p(x),f(x)\mathrm{R^n}上で定義された二乗可積分確率密度関数とする。さらに、f(x)C^2級であるとする。

このとき、f(x)

f(x)=\int_{\mathrm{R^n}}d^na\int_{\mathrm{R^n}}d^nbF(a,b)p_{a,b}(x)

と展開可能である。

以下では、特に断りがない限り、積分範囲は\mathrm{R^n}であるとする。

展開係数は例えば、

F(a,b)=-\frac{\Pi_k|a_k|}{C_p}\int[\Pi_k\frac{d^2}{dt_k^2}f(t)] p_{a,b}(t)d^nt

C_p=\int\Pi_k|\omega_k| |\hat{p}(\omega)|^2d^n\omega

と表すことができる。

ここで、\hat{p}(\omega)p(x)フーリエ変換である。

特に、p(x)として、正規分布をとれば、混合ガウス分布の展開公式になる。

 

証明

連続ウェーブレット変換を導く場合([1]のTheorem4.4)と同様の考え方である。

q(x)=\int d^na\int d^nbF(a,b)p_{a,b}(x)

とおくと、

q(x)=\int d^na\int d^nbF(a,b)\Pi_k |a_k|^{-1} p(\frac{x-b}{a})=\int d^na\Pi_k |a_k|^{-1} F(a,\cdot\cdot)\star p_a(x)     

ここで、\starは畳み込みを表し、F(a,\cdot\cdot)内の\cdotは畳み込みに関する変数を表す。また、p_a(x)=p(\frac{x}{a})である。

同様に、

F(a,b)=-\frac{1}{C_p}[\Pi_k\frac{d^2}{dt_k^2}f]\star \tilde{p_a}(b)

 ここで、\tilde{p_a}(x)=p_a(-x)である。
合わせて、
q(x)=-\frac{1}{C_p}\int d^na \Pi_k|a_k|^{-1}[\Pi_k\frac{d^2}{dt_k^2}f]\star\tilde{p_a}\star p_a(x)
\hat{p_a}(\omega)=\Pi_k a_k\hat{p}(a\omega)
および、
\hat{\tilde{p_a}}(\omega)=\hat{p_a}(-\omega)=\overline{\hat{p_a}(\omega)}
を用いる。\overline{p}は、p複素共役である。最後の等式は、p_aが実数値関数であることから従う。
q(x)フーリエ変換すると、
\hat{q}(\omega)=\frac{\hat{f}(\omega)}{C_p}\int d^na \Pi_k|a_k|^{-1}a_k^2\omega_k^2 |\hat{p}(a\omega)|^2
a'_k=\omega_k |a_k|と変数変換して、
\hat{q}(\omega)=\hat{f}(\omega)
となるので、フーリエ逆変換して結果を得る。

追加:
Fourier変換の際、\omegaa積分を交換してますが、厳密には、まずa_kに関する積分区間を有限にします。
Youngの不等式により、\omegaに関する積分結果が有限になることを示せるので、Fubiniの定理により、積分順序を交換します。
そのあと、a_k積分範囲を\mathrm{R^n}にする極限をとることで、積分順序が交換可能であることを示します。

Reference.
[1] St´ephane Mallat., "A Wavelet Tour of Signal Processing"